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執筆者の写真傳田光洋

ゴードン会議

ゴードン会議、あるいはゴードン研究会議は、自然科学系の研究者なら誰でも知っているであろう国際会議だ。数学、物理、化学、生命科学、医学、さまざまな分野ごとの会議が、大体、夏、開催される。「哺乳類の皮膚バリア機能」の会議もあって、留学中、ぼくは指導してくださったイライアス教授、ファインゴールド教授から研究成果をポスター発表してみないか、と誘われた。会議は1995年の夏、ニューハンプシャーで開催された。ボストンでレンタカーを借りて、ファインゴールド教授がナビゲーター。ぼくは2時間半、会場を目指して北に向かって運転した。

参加者、男性は半ズボン、Tシャツが主流。ネクタイやジャケットを着ている人はいない。招待講演者は、それまで論文で名前をみただけの著名な研究者ばかりだった。ぼくも、そのころは若くて、感動しました。大げさに言えば映画ファンの人がカンヌ映画祭かなにかに紛れ込んで、著名な監督や女優、男優の姿を見たようなもの。


自分のポスターの前で緊張していたら、イライアス教授がワイングラスを持ってきて「まあ、一杯やってリラックスしたらいい」と仰せである。そう、午後のポスター発表の会場ではワイン飲み放題、軽食も出る。その後、夜の講演もあるので酔っぱらうわけにはいかないのだが。


一昨年の会合のスケジュールだと、朝、7:30~8:30朝食、それからコーヒーブレイクをはさんで講演。12:30からランチ。午後は16:00まで自由時間。研究者たちは個別に話し合ったり、散歩にでかけたりする。緑が多い避暑地なので気持ちいい。ただ、夜には熊が出ることもある。その後、「ワインつき」のポスター発表。18:00からディナー。19:30~21:30まで講演である。なかなか充実した内容だ。


「皮膚バリア」の会議は、ニューハンプシャーでの開催が多い。その時、最後の日のランチにはメインロブスターが丸一匹出る。これは恒例になっているらしく、会議の座長は、参加者全員分のロブスターを確保するのが大変だ、とも聞いた。


とにかく、「皮膚バリア」研究で世界のトップクラスの研究者が集まる。普通の学会だと偉い先生はどこかの会議室で偉い先生方だけの会合で忙しく、ぼくのようなチンピラが直接話す機会はない。しかしゴードン会議では有名な研究者がワイングラス片手にラフな格好でポスター会場をそぞろ歩かれる。1995年の会議の時、ぼくはバリア研究の世界の著名な研究者、ほとんどと知り合いになれた。


1996年、帰国してから、「ゴードン会議に招待される研究者になろう!」という人生目標を立てたが、あらら、1999年に招待されてしまった。その時は例外的にイタリアで開催された。日曜から始まって、ぼくの講演は水曜日だった。それまでの講演で、恩師のイライアス教授、ファインゴールド教授が「水曜日のデンダの講演を聴け」と何度も宣伝してくださり、本番は拍手に包まれた。終わってからも、いろんな研究者が列になって話を聴きにきた。人生最良の日。

2019年会議のサイト;

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