生まれつき手先が不器用で、楽器には縁がない。でも、声変わりする前は、ボーイソプラノで、中学生の時、独唱させられたこともあり、徹底的な音痴というわけでもない。だから「なにかのはずみで20分間だけ楽器が弾けたら」と、無意味な、しかし切実な想像をしてみる。
ピアノだったらベートーヴェンのソナタ「悲愴」の第二楽章。だれでも聴けばご存知です。映画などのBGMにもよく使われている。すばらしいなあ、と思うのは辻井伸行さんの演奏。ピアノという楽器は鍵盤楽器でありながら、音の強弱を表現できるように開発された。辻井さんの演奏は、それが美しく、優しくすべき音は優しく、静かに抑える音は静かに、聴いている方が「こうなってほしい」と思うように流れる。
ヴァイオリンだったらシベリウスのヴァイオリン協奏曲の第一楽章。シュロモ・ミンツさんの演奏を聴いています。ベルリンフィル。Wikipediaによれば「極寒の澄み切った北の空を、悠然と滑空する鷲のように」と楽譜に指示があるらしい。確かに冒頭のソロは孤独な厳しさをたたえた哀しいまでに美しいメロディーです。
チェロなら、当たり前すぎますか、ドボルザークのチェロ協奏曲1楽章。ロストロポーヴィチさんの演奏を半世紀近く聴き続けています。小澤征爾さんのボストンフィル。堂々としていて凛々しい印象。聴くと元気になる。
フルートならドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。アラン・マリオンさんの演奏、ジャン・マルティノンさん、フランス国立放送局管弦楽団。中学生の頃、北杜夫さんの小説「幽霊」に魅せられていて、そのBGMとでもいうべきこの曲も半世紀近く聴いてるなあ。
オーボエはボロディンの「イーゴリ公・ダッタン人の踊り」の一節。作曲家の名前も曲名も御存知なくともメロディーは誰でも知ってます。カラヤンさん、ベルリンフィル。ソリストのお名前がわかりません。ごめん。でも、疲れた時、イヤなことがあった時、何度も繰り返し聴く曲です。
まあでも、今、並べてみたら世界的なソリストさんばっかりで、ちょっと楽器がいじれるレベルでは、むしろ聴いているだけでいいのでしょうね。
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