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執筆者の写真傳田光洋

魅惑のマンガ家

十代から、大体十年に一度、魅力的なマンガ家に出会っている。


1970年代諸星大二郎さん。中学生の時、ネンザの治療のため通っていた接骨院で、少年ジャンプに連載を開始された「黒い探究者(妖怪ハンター第一話)」を見て茫然とした。その後、大学に入って単行本を集め始めた。「生命の木」「暗黒神話」には圧倒された。そういう人、多いですよね。


1980年代坂口尚さん。学生時代、洛北の、マンガが充実していた本屋で「3月の風は3ノット」をいわゆる「表紙買い」して魅了され、単行本を集め始めた。坂口さんは日本のマンガ家で最も絵が巧い天才だ。勢いのある線でデフォルメされた人物が美しい。そして光や風、気配まで「描いて」しまう。早世されたのが残念です。最後の作品「あっかんべエー一休」は絵も思想も日本のマンガの中の最高峰だと思う。


1990年代津野裕子さん。サンフランシスコで研究をしていた。ジャパンセンターの紀伊國屋書店で「ガロ」を買ったら「A Taste of Honey」が掲載されていた。帰国して「デリシャス」「雨宮雪氷」「鱗粉薬」「一角散」と本が出るたびに購入した。「美しい絵で描かれたシュルレアリスム」という作品がありうることを知った。まだまだ描いてください。


2000年代島田虎之介さん。当時、池袋ジュンク堂のコミックフロア(B1F)に「サブカルチャー系」コーナーがあって、「ラスト・ワルツ」「トロイメライ」を購入し、その、奔放で虚実定かならざる物語に圧倒されました。一昨年刊行された「ロボ・サピエンス前史」には改めてとてもとても感動した。SFってこれだよなあ。アーサー・クラークやアシモフ、ハインラインをワクワクしながら読んでいた少年時代を思い出した。


2010年代町田洋さん。これまたジュンク堂「サブカルチャーコーナー」で「惑星9の休日」「夜とコンクリート」を購入。そのころ、ぼくは人間関係のごたごたで疲れ果てていた。酷い人間不信に陥っていた。そんな時、町田さんの作品は、干からびた心に静かな雨が降るようにしみこんでいった。半年ぐらい、枕元に置いて、毎晩、寝る前に何度も読み返していました。新作を待ってます。


2020年代、まだ、これと言った作家さんには出会っていません。

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