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執筆者の写真傳田光洋

自転車で宇宙と同調する

この2年ほど、雨が降らなければ毎朝のように、近所の鶴見川、早淵川の土手のサイクリングロードを自転車で20㎞ほど走っている。かつて勤め人だった頃、病んだウツはほぼ治ったが、不眠症が未だに治らない。早朝、昇る朝日に向かってペダルをこぐと、その夜はよく眠れる。

 

港北ニュータウンを流れる川だが、周囲には草木や動物がいっぱいいる。シラサギ、アオサギ、カワセミ、オナガやイソヒヨドリなど美しい鳥が多い。タヌキにも何度か出会った。アオサギは人を怖れず、ゆうゆうと目の前に降りてきたりする。

 

夏は気楽だ。夜明けと共にTシャツに半ズボンで走り出す。雨が降っても気にしない。新横浜の手前で驟雨が止んだと思ったら、天空に二重の虹がかかった。

 

冬はやはり辛い。頭からつま先まで重装備。7時を過ぎると、通勤通学の人が多くなるので、暗いうちから走り出す。綱島あたりで陽が登る。今、世界が始まったかのような荘厳な景色に寒さを忘れる。

 

ぼくたちの曽祖父の時代までは、冷暖房は完全ではなく、人々は季節の移ろいと共に生活していたと思う。そこでは人間のリズムと宇宙のリズムが同調していた。いや、それぞれの土地の風土、宇宙のリズムと同調するように人間の生理状態は進化してきたに違いない。今は、温度も光も自由自在になったが、そしてそれは快適なのだが、本来、身体の内側に持っていたリズム、そこからの乖離があるのではないか。時々、チューニングが必要なのではないか。

 

急ぐばかりが生きることではない。世界と宇宙と、理屈ではなくカラダでそのリズムにのる、それが大事ではないかと、自転車で走れた夜は、自然に訪れる眠りへの予感の中でそう思う。



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