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ただいることの責任

執筆者の写真: 傳田光洋傳田光洋

ずいぶん前のことだから、もう書いてもいいだろう。


40年近く前、友人の結婚式に招待された。新婦は名門私大の出身で、パーティーでは同窓の女性の隣に座った。その彼女は、当時ぼくが勤務していた企業の名前を知ると、その会社の商業的な施策について、すごい勢いで非難、罵倒を始めた。入社して数年もたたないぼくは呆然として聴いていた。ぼくは入社以来、研究部門配属だったから本社の営業部門の施策については何も知らない。なぜ自分がここで説教されるのか、理解できず、ただ場所柄、議論を始めるのも躊躇され、また反論するに足る知識もないのでそのままおとなしく拝聴した。


去年の夏、知床を旅した。急に天気が悪くなり、ホテルを出る前、ロビーでその日行く予定のツアーについてつれあいと話していたら、ヨーロッパ系と見えるロビー係の若い男性が「なにかお困りですか?」と長身をかがめて声をかけてくれた。相談すると「そのツアーは、今日は中止になってますね。別の良い場所もありますよ」と丁寧に教えてくれた。すばらしい日本語だった。去り際に、つい「日本語、お上手ですね。どこの国の方ですか?」と聞いてしまった。彼は一瞬、逡巡の後「ロシア」と答えた。どう応答していいかわからず「御親切な案内、ありがとう!感謝してます」と答えた。


今の世の中、誰もがなにかの組織、企業や国家、あるいは人種や宗教に属している。個人としてその組織からは離れた場所にいると思っていても、別の立場の人からは、その組織の背景を担わされる。


ただ、ぼく個人は、誰かに接する場合、その人が属する「組織」のことはなるべく気にせず、その人個人に対峙しようと思っている。実際には、なかなかむずかしいのだけど。

 
 
 

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