top of page
  • 執筆者の写真傳田光洋

頭が悪い

更新日:4月4日

頭の悪さには自信がある。特に記憶力。いわゆる「丸暗記」ができない。たとえば英単語のつづり。未だに中学生レベルの単語のつづりが怪しい。最近の”Word”は優れモノで、つづりを間違えると赤い下線が出る。右クリックすると「正しい候補」が出てくる。この機能のおかげで、英語の論文などを何とか書けている。


大学の工学部で化学を専攻したが、この化学も、実は高校の「化学I」でつまずいた。炭素(元素記号C)には「手」が4本。窒素Nには3本、酸素Oは2本、水素Hは1本。だからCH4 (メタン)、NH3 (アンモニア)、H2O(水)なんて分子ができるわけだが、なんと、この程度の事すら覚えられず途方に暮れた。


そんな時、たまたま湯川秀樹博士の弟子である片山泰久博士の「量子力学の世界」(講談社ブルーバックス)という、数式無しで量子論を説明してくれる本を読んだ。そこで原子の電子軌道の話があって、なぜ炭素4,窒素3,酸素2,水素1なのかがわかった。それ以降、それらを忘れたことはなく、ちゃんと大学を卒業できた。あつかましくも、その後、博士号までもらった。


まあ、大抵のことにおいて、そんな具合である。理由を説明してもらえないと記憶できない。たぶん、そのせいだろう。眼の前になにかの現象があらわれると「なぜ、そうなのだろう?」と考え込む習性がある。とりあえず理由がないと落ち着かない。


皮膚の研究を始めて、三十年以上、なんとか研究でメシが食えた。海外では、そこそこ評価されて招待講演の依頼もあった。そこで、なんども「君は、どうして、そう次々に当方もない仮説を思いつくんだ?」と聞かれた。「頭が悪かったからだよー」とまじめに答えています。


日本の組織、学校や学会、企業など、どこにでも規則がある。不文律なんてのもある。そういうのにも「なぜですか?」と訊いてしまう。「みんな、従ってるんだ」「ずっと、そうしてきたんだ」と怖い顔をされることが多い。当然、記憶できないまま、時が流れてゆく。

閲覧数:124回0件のコメント

最新記事

すべて表示

SF skin fiction 

東京大学出版会のPR誌「UP」(ユー・ピー)2024年3月号に表題の文章を寄稿しました。 PR誌「UP」 - 東京大学出版会 (utp.or.jp) ここんとこモノ書き仕事があって、ブログの文章が書けません。まあ、どっかで見かけたら眺めてください。

どくとるマンボウ

今、還暦あたりの世代で、少年時代、読書好きだった人は、大抵、どくとるマンボウ、北杜夫さんの作品に親しんでいたのではないか。しばらく前、同じ歳の友人の写真家に「『さびしい王様』の本名知ってる?」と問うと、彼はニタリと笑い(ここ北杜夫調)「シャハジポンポンババサヒブアリストクラシーアルアシッドジョージストンコロリーン28世」と諳んじてみせた。 1960年春「どくとるマンボウ航海記」がベストセラーになり

ゲルマラジオ

小学生の頃、父が「子供の科学」という雑誌を買ってきた。彼としては一人息子をなんとか理系に進ませようと考えた上だったのだろうと思う。申し訳ないが、ぼくは、その雑誌の連載記事である「ラジオの制作」という頁ばかり眺めていた。やがて小遣いからハンダゴテを買い、一番、簡単にできそうなゲルマラジオの部品を通信販売で購入した。ゲルマラジオの部品はコイル、可変コンデンサ、ゲルマニウムダイオード、イヤホンだけです。

bottom of page