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人間の時代

執筆者の写真: 傳田光洋傳田光洋

たしか1973年の事です。ああ、もう半世紀前。NHKの教育テレビ、今ならEテレですか。「人間の時代」という番組があった。イギリスのBBCで作成された13回の科学の歴史の番組を日本語吹き替えで放映してました。当時、なんというか「知的環境として最悪、どん底」のろくでもない町立中学校に嫌々通っていたぼくは、とてもとても感動しながら見てました。


ジャイコブ・ブロノフスキーという科学史家のおじさんが、人類の誕生から農耕の出現、文明の勃興、ルネサンス期の天文学、ニュートン力学、産業革命から進化論、そして現代科学の基礎となった量子論、相対論などに至る歴史を、田舎の中学生でも理解できるように語ってくださった。人類誕生のアフリカ大地溝帯やイースター島、アインシュタインが相対性理論を思いついたケルンの街など、世界のあちこちにブロノフスキーさんは出向いて語る。


印象に残ったのが原子爆弾の開発の物語。ナチスに追われて亡命した物理学者レオ・シラードはナチスが原爆を開発する危険性を考え、アインシュタインを動かし、ルーズベルト大統領に原爆の開発を進言した。そうして実現したのがマンハッタン計画。ところが原爆の完成が見えてきたころ、ナチスは降伏した。シラードは一転、原爆開発中止、その日本での使用を止めるように進言するが、計画は進み、広島、長崎に原爆が投下された。この話を、シラードの友人であり、戦後、広島、長崎の調査も手掛けたブロノフスキーさんが語ると、田舎の中学2年生にもずっしり響きました。


この映像が今も見れます。BBCの放映がアマゾンで「The Ascent of Man」DVDセットで、たったの2625円。英語のサブタイトルがあるので、ぼくにもあらすじは何とかわかりました。今見ても、20世紀までの科学、技術の変遷をわかりやすく描いた傑作で、たとえば大学の教養課程のテキストにしても良いと思う。


久しぶりに映像を見て驚いたことが一つ。去年、出した本で、ぼくは「人類が世界に広がった。その最先端、フロンティアであった人たちの血液型はO型だった」と書いた。なんと、このネタ、「The Ascent of Man」でブロノフスキーさんが紹介しています。ぼくの頭は、中学生のころから、半世紀、ほとんど進歩していない・・・。

 
 
 

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