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  • 執筆者の写真傳田光洋

ゲルマラジオ

更新日:1月17日

小学生の頃、父が「子供の科学」という雑誌を買ってきた。彼としては一人息子をなんとか理系に進ませようと考えた上だったのだろうと思う。申し訳ないが、ぼくは、その雑誌の連載記事である「ラジオの制作」という頁ばかり眺めていた。やがて小遣いからハンダゴテを買い、一番、簡単にできそうなゲルマラジオの部品を通信販売で購入した。ゲルマラジオの部品はコイル、可変コンデンサ、ゲルマニウムダイオード、イヤホンだけです。電池はない。戦前から戦後の頃、書かれた小説を読むと「鉱石ラジオ」というのがでてくる。この「鉱石検波器」をゲルマニウムダイオードにしたのがゲルマラジオです。


残念なことに、当時、滋賀県の山間部に住んでいてラジオの電波が弱く、せっかく作ったゲルマラジオからは何も聴こえなかった。


電波が弱い場所では、電源を用いて、それを増幅しなければ聴こえない。凝り性だったぼくは、トランジスタ1個を使う「増幅回路」を組み込んだ「1石ラジオ」の制作に挑戦した。これだとかすかながらラジオ放送が聴けた。それでは!とトランジスタ2個を使って増幅機能をパワーアップした「2石ラジオ」も作った。これだとスピーカーも鳴らせた。


やがて高校受験を控え、ラジオ制作はやめてしまった。でも、この時期の経験はずーっと後、役に立った。低予算で研究をすることになった時、ハンダ付けがまあまあできたので、簡単な装置は秋葉原で部品を買って安く自作することができた。今時の若い人はインターネット技術には長けているけど、ハンダ付けなんて骨董的作業やったことないよね。


数年前、ふとゲルマラジオを作ってみたくなった。秋葉原で安いキット、部品を木の板に配置し、配線するだけのものを買った。屋外からアース線を引き、長い電線を枠に巻き付けアンテナとした。さすが、今住んでいる場所は都会です。電源が無くても昼間、3局、はっきり受信できる。夜になると電離層だかなんだかの作用で、いろんな放送が現われる。曇天の時も受信できる放送が多い。


電源が無いからスイッチもない。停電でも平気。たまにイヤホンを耳にあてる。あたりまえだが、だれかのおしゃべりや音楽がいつも聴こえる。


残念ながらそれは今の電波だろうけど、こころは半世紀前の田舎の少年に戻っている。


ゲルマラジオとアンテナ
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